本研究の目的は、関東大震災後の1926-34年期に、文部省在外研究員などとしてドイツに滞在し、当時世界で最も民主的といわれたワイマール共和国が崩壊しヒットラー政権が成立する過程を目撃・体験して反戦反ナチ活動に加わった在独日本人反帝グループの活動を発掘し、彼らの体験とその後の軌跡の検討を通じて、ドイツのワイマール民主主義から日本の戦後民主主義への継承・断絶関係を探求するものである。第3年度である平成12年度は、芸術家・文化人グループを集中的に研究した。 対象者は、(演劇)千田是也(戦後俳優座代表)、佐野碩(戦後メキシコ演劇の父)、土方与志、(映画・音楽・写真)岡内順三、衣笠貞之助、岡田桑三、二宮秀、(建築)山口文象、坂倉準三、(文学)勝本清一郎、藤森成吉、(美術・美学)島崎蓊助、鳥居敏文、竹谷富士雄、吉井淳二、内田巌、佐藤敬、田中忠雄、富永惣吉、竹久夢二、徳川義寛、(スポーツ)工藤一三(柔道講道館指南)、(ジャーナリスト)鈴木東民(連合通信)、安達鶴太郎(連合通信)、与謝野譲(ベルリン週報)、岡上守道(朝日)、井上角太郎(朝日)、嬉野満州雄(読売)、喜多村浩(読売)、(その他)八木誠三、小栗喬太郎、小林陽之助、勝野金政、根本辰。グループの周辺にいた重要な人物として、村山知義、武林無想庵、辻潤、矢代幸雄、芹沢光治良、秦豊吉、山脇巌・道子、高田博厚、林芙美子、宮本百合子、名取洋之助、中村光夫らで、「加藤哲郎の研究室」から「ネチズン・カレッジ」に拡充改組したインターネット・ホームページ上に、データベースを公表した。 唯一の生存者である鳥居敏文画伯から長時間の聞き取りを行ったほか、特に村山知義・岡内順三・島崎蓊助・竹久夢二・鈴木東民・井上角太郎・小林陽之助については、資料収集のうえでも大きな進展があり、その成果もホームページに公開してきた。
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