本研究は、関東大震災後の1926-34年期に、文部省在外研究員などとしてドイツに滞在し、当時世界で最も民主的といわれたワイマール共和国が崩壊しヒットラー政権が成立する過程を目撃・体験して反戦反ナチ活動に加わった「在独日本人反帝グループ」の活動を発掘し、彼らの体験とその後の軌跡の検討を通じて、ドイツのワイマール民主主義から日本の戦後民主主義への継承・断絶関係を探求するものであった。本研究の特色は、これをインターネットを活用して進めるもので、これまでの研究データを、すでに26万人以上のアクセスを得て、日本の政治学関係では最大の定番サイトとなったインターネット上の個人ホームページ「加藤哲郎のネチズン・カレッジ」<http : //www. ff. iij4u. or. jp/katote/Home. shtml>に公開し、関連情報の提供をよびかけることによって、大きな成果を得ることが出来た。 第4年度(最終年度)である平成13年度は、これまで研究してきた「ベルリン反帝グループ」の日本人データベースを完成すると共に、1926-33年期に日本人と一緒に活動していたことがこれまで判明している外国人のデータベースをも作成した。そのなかのインド独立運動家ヴィレンドラーナ・チャットパディアについては、英文データベースをも作成し、海外から多数の情報が、インターネット・電子メールを通じて寄せられた。また、昨年度の文化人・芸術家データベースの延長上で、作家林芙美子のパリ滞在中の日記と作家島崎藤村3男島崎蓼助の遺品が発見された。 なお、これまでの研究を総括して、ワイマール民主主義から戦後民主主義への在独日本人ネットワークによる活動の一端を、個人著作『20世紀を超えて-再審される社会主義』のかたちで、公刊することができた。
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