本研究は、関東大震災後の1926-34年期に、文部省在外研究員などとしてドイツに滞在し、当時世界で最も民主的といわれたワイマール共和国が崩壊しヒットラー政権が成立する過程を目撃・体験して反戦反ナチ活動に加わった「在独目本人反帝グループ」の活動を発掘し、彼らの体験とその後の軌跡の検討を通じて、ドイツのワイマール民主主義から日本の戦後民主主義への継承・断絶関係を探求するものであった。本研究の特色は、これをインターネットを活用して進めるもので、これまでの研究データをすべてデータベース化し、すでに26万人以上のアクセスを得て日本の政治学関係では最大の定番サイトとなったインターネット上の個人ホームページ「加藤哲郎のネチズン・カレッジ」<http://www.ff.iij4u.or.jp/〜katote/Home.shtml>に公開して、関連情報の提供をよびかけることによって累積的に新たな事実が判明し、きわめて大きな成果を得ることが出来た。 対象となったのは、当時ワイマール・ドイツに滞在した、有澤広巳(当時東大経)、蝋山政道(東大法)、堀江邑一(高松高商経)、谷口吉彦(和歌山高商経)、国崎定洞(東大医)、山本勝市(和歌山高商経)、舟橋諄一(九大法)、菊池勇夫(九大法)、山田勝次郎(京大農)、松山貞夫(福島高商法)、横田喜三郎(東大法)、黒田寛(京大法)、八木芳之助(京大経)、土屋喬雄(東大経)、蜷川虎三(京大経)、新明正道(東北大経)、服部英太郎(東北大経)、杉本栄一(東京高商経)、大熊信行(高岡高商経)、小畑茂夫(大倉高商経)、三宅鹿之助(京城大経)、三枝博音(成蹊高哲学)、野村平爾(早大法)、宮川実(和歌山高商経)、大岩誠(京大法)、和井田一雄(ベルリン大独文)、喜多村浩(ベルリン大経)、小林義雄(ペルリン大経)、千足高保(ベルリン大独文)、山西英一(ロンドン大英文)、平田文夫(桐生高工化学)、大野俊一(パリ大独文)、ねずまさし(パリ大考古学)の知識人たちのほか、演劇の千田是也(戦後俳優座代表)、佐野碩(メキシコ演劇の父)、土方与志、映画・音楽・写真の岡内順三、衣笠貞之助、岡田桑三、二宮秀、建築の山口文象、坂倉準三、文学の勝本清一郎、藤森成吉、美術・美学の島崎蓊助、鳥居敏文、竹谷富士雄、吉井淳二、内田巌、佐藤敬、田中忠雄、富永惣吉、竹久夢二、徳川義寛、スポーツの工藤一三(柔道講道館指南)、ジャーナリストとして鈴木東民(連合通信)、安達鶴太郎(連合通信)、与謝野譲(ベルリン週報)、岡上守道(朝日)、井上角太郎(朝日)、嬉野満州雄(読売)ら文化人・芸術家グループである。さらに、彼らに協力した外国人で、氏名の判明した中国の廖承志、成仂吾、章文晋、王柄南、朝鮮の李康国、インドのヴィレンドラーナ・チャットパディアらを、英文でもデータベース化した。 これらを用いて、多数の論文と、著書「20世紀を超えて」(2001年)を発表することができた。
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