本年度は、アルゼンチンを中心に、メルコスールと七会勢力との関係を調査した。経済統合はアルゼンチシ国内の比較劣位にある産業に大きな影響を与えることが予想されたので、アルゼンチンの議会議事録をもとに、そうした産業を議会がどのような形で保護しようとしたのかを、メルコスールの成立を定めたアスンシオン条約をめぐる審議のなかから探った。その結果、アルゼンチンでは党派を問わずに議員が、経済統合の持つマイナス面については比較的楽観的で、むしろ、議員の圧倒的多くは、統合をラテンアメリカの統合に向かう一歩として高く評価していたことが明らかになった。他の国の議会の審議状況は、残念ながら国会図書館には所蔵されていないために、まだ調査が進んでいない。なお、本年は労働運動とメルコスールとの関わりについても、調査を進めたが、労働運動も、アルゼンチンについては、メルコスールのもつマイナス面に対して警戒心は薄く、むしろ、それを支持している。この受動的性格は、メネム政権の進める新自由主義政策に対する労働側の一般的な寛容さとどういう関係にあるのかを確認するために、労働運動の新自由主義的経済政策への寛容さについて調査し、98年11月に開催されたラテンアメリカ政経学会において、「新自由主義的政策労働運動の対応:合理的選択理論の適用可能性をめぐって」と題する研究発表を行った。なお、戦後のアルゼンチン外交について、日本でどのような資料があるのかを外交資料館に数回赴いて調査した。
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