本研究は、平成10年度と11年度の二年間を期間とするものであり、第一年目にあたる本年度は、資料の収集と整理を中心に研究を展開した。 まず、設備備品費で購入した各道府県町村会の刊行した団体史の分析から、郡制廃止後も、全国-各府県町村長会の末端は、各府県の郡レベルの町村長会におかれ、対府県および対国に対する利益要求も、先ずは、郡レベルで集約されたものが府県→全国レベルへとあがってゆくことが確認された。また、資料収集旅費等による愛知県の郡町村長会の調査により、郡教育会・郡農会・尚武会などの半官の社会的自治団体の運営も郡町村長会に委ねられていることが明らかとなった。 また、国立国会図書館等での資料収集により、各府県の地方事務所設置(昭和17年)に至る中央政府および各府県の動向を明らかにしたいと考えたが、現時点では、十分に資料を得るに至っていない。しかし、一般的には、戦時動員体制の下で町村行政が画一化することにより、地方事務所の主要な任務は、府県知事の時局事務及び法令の定める(主として徴収、挑発、召集)を執行する知事の補助機関とされた。その中で、府県は、地方事務所を経て、各町村会を含む各町村間の連絡調整を超え、事実上の指揮命令を行ったといえ・る。 また、戦後の地方自治法施行に伴う、愛知・兵庫・広島各県の地方事務所の設置に関する条例の検討を行った。その結果、上述の戦時動員のための中間指導機関が、戦後地方自治法の下で、国の機関委任事務が残されたことに対応し、県知事に委任された国の機関委任事務を地域で執行し、また、町村長に委任されたそれ等を、府県が監督するための出先機関として、戦後の地方事務所として位置づけ直されたとの見通しを得ることができた。
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