平成10年度に引き続き、本年度前半は、愛知県立図書館や兵庫県立図書館その他で、旧村(区有)文書の調査・収集を行った。また、地方事務所については、本年度後半にも、愛知、兵庫、広島の各県の中央図書館で各県県庁文書の補充調査も行った。 その中で、愛知県立公文書館所蔵の地方事務所関係文書の存在を知り、愛知県における地方事務所の成立を、内務省との往復文書も含めて、詳細に知ることができた。また、愛知、兵庫や広島の各県における『公報』から、地方事務所制度の法令上の変遷と、訓令・条例上の規定に関する各県毎の異動などを発見することができた。なお、上記の資料の検索と複写については、その一部を、博士後期課程院生に補助作業として委託した。 各県の町村会関係資料等については、公刊文献を中心に、収集に努め、刊行済みの主要諸県の町村会史を入手することができた。その結果、各県の町村会の活動の大要を把握することができた。しかし、町村会と地方事務所の関係については、これら資料からは、明確にし得なかった。 特に、今年度の成果としては、上記愛知県の地方事務所関係文書の複写と解読を進めた結果、内務省は、地方町村会の反対を回避するために、地方事務所を法令上の独自の根拠を有しないものと設置しておきながら、当初から、地方事務所長に知事権限の一部を委譲して、代決・専決処分を認めたこと、さらに、戦局の悪化とともに、代決処分事項の大幅な拡張を行い、地方事務所長の権限を大幅に拡大したこと、を明らかにすることができた。 また、戦後改革の中でも、地方事務所は、内容的には民主化・分権化改革を手法的には中央集権的に押し進める、第一千指導機関として、活動したことが明らかになった。以上の成果は、研究成果報告書(冊子体)にまとめられている。
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