本研究では、ペルシャ湾や、また中央アジアやコーカサスの資源をめぐる地政学や地経学(geo-economics)など国際政治を分析する上で重要性の高いポスト・ホメイニー体制のイラン・イスラーム共和国の権力構造を分析することによって、独特の宗教体制をとるイランの政治構造に発生しつつある変容を検討し、湾岸やカスピ海沿岸などその周辺地域や国際社会に及ぼす影響を考察している。その際、「保守派」・「現実派」の権力基盤や、それぞれの内政・外交に関するイデオロギー、支持勢力の問題、体制外の宗教勢力の動静などを重点的に解明することを心掛けている。イランの動向が重要なのは、米国がイランに対する封じ込めを追求してもヨーロッパ諸国や日本が容易に追随しないことからもうかがえる。特に日本にとっては、アジア諸国の経済が回復すれば、アジア諸国とエネルギーをめぐる競合が始まり、対イラン政策の重要度が増すことは疑いがない。今後のイラン政治の動向を考える上でイラン宗教体制の権力構造の分析は欠くことができないことは明らかで、本研究は21世紀に向けての国際政治の重要なカギを解明するものといえる。 平成10年度は、イスラーム共和国の権力構造やイラン内政・外交の動向に関するペルシア語資料や欧文資料の蒐集を行った。そのため、東京の国立国会図書館のペルシア語新聞、雑誌の複写を行い、また欧文資料についても国立国会図書館の欧米の学術雑誌、新聞等の複写も行った。この目的のために静岡〜東京を往復する旅費を必要とした。また、欧文資料ではインターネットによる情報の蒐集も行い、その蒐集や、蒐集した情報の整理については、研究補助を必要とした。さらに当該研究テーマに関わる文献や雑誌を購入し、その読み込みを行っている。
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