10年度の目的は、集計データの分析と事例研究の準備であった。 集計データの収集は現在進行中であり、今後は産業構造に関するデータを集中的に集める予定である。 合併の政治的効果に関しては、集計データをもとに2通りのサンプリングを行い、分析をした。その結果は、「研究発表」に掲示している世界銀行編の書物に収録される論文に取り入れられている。結論は、合併は政党間競争および投票率に対してネガティブな影響を及ぼすとはいえないというものであった。厳密に言えば、すべての町を母数にしたランダムサンプリングに基づく調査の結果と代表的県におけるすべての町を対象にした調査の結果とでは、微妙に異なるところがある。結論はなお不安定であるために、全数調査を行う必要があるだろう。 合併の経済的効果については、時系列による分析は、合併以外の環境変化の影響をコントロールすることが容易ではないために、短期的な影響に関しては困難が多い。長期的な影響については、産業構造に関するデータの収集を終えて後に行う。その際、経済学者による人口規模と一人当たり経費の比較に関する静態的な研究の手法を参考にすることになるであろう。 事例研究のための事例の選定に関して、1970年代に革新自治体となった市とそうでない市を、人口等のデモグラフィックな指標をコントロールしたうえで選定して、合併に至る経過、その後の政治的・経済的変動を調査する方針を固めつつある。革新自治体の相当数が、昭和の大合併によって誕生した市であるという調査結果が、このような着想の基礎にある。
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