今年度は本研究プロジェクトの第2年度にあり、本プロジェクトの発展部分を集中的に研究した。まず、個人が形成する社会観と個人の経験との間の相互関係に関する理論の中心部分が構成できた。この研究は、発表論文"Inductive Game Theory : Discrimination and Prejudices"(Journal of Public Economic Theory)にまとめた。具体的には、差別行動が見られる社会において、個人の経験から人間の好みに基づいて社会観が最も形成されやすいことが議論され、これが偏見の原因になることが示された。さらに、個人の社会観形成の理論をより発展させるための基礎として、game logicを使って研究し、それを論文"Epistemic Consideration of Decision Making in Games"(Mathematical Social Sciences)にまとめた。この論文において、ある種のゲームを完全な形で解くには、ゲームの構造(利得関数)およびプレイヤー達の意思決定の様式がプレイヤー間で共通認識(common Knowledge)となる必要があることを議論した。他の種のゲームにおいては、プレイヤー間のコミュニケーションなしでは、意思決定ができないことが示された。 平成12年度は、以上の発展に基づいて、個人の経験と社会観の理論をより発展させたい。
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