本研究では、それぞれ異なる価値や目的を追求する複数の経済主体(個人、企業、国家など)の間でいかにして協力関係が実現し発展していくかという社会的協力の問題をゲーム理論の新しい分析手法を用いて考察する。特に、社会・経済環境を単に所与とするのではなく、経済主体が自発的に交渉、組織形成、制度の再構築などを行い協力の実現と発展をめざす状況を研究対象とする。 平成12年度の研究実績は以下の通りである。 (1)協力と社会発展の動学ゲーム分析 前年度に構築した組織形成の進化ゲームモデルの分析を継続し、経済主体の間で協力のインセンティブが均一でない多様な社会的環境では、社会の多様性が協力の成立と集団形成の進化に本質的な影響を及ぼすことを明らかにした。さらに、部分的協力の形態が進化ゲームの確率的安定状態となる条件を導出した。 (2)地球環境問題への応用 本研究課題での理論成果を応用して、地球環境問題での国際協力の可能性とそのメカニズムを考察した。具体的には、共同実施と排出許可証取引きによる二酸化炭素排出量削減のゲーム理論的モデルを構築し、京都議定書で合意された先進国間の削減量割当てルールと排出許可証の市場価格を実際のデータに基づいて評価した。 最後に、本研究課題で得られた研究成果をゲーム理論ソサイティの第1回国際大会(スペイン、7月)を含む三つの国際カンファレンスで報告し、国内外の研究者と研究交流をもつとともに今後の研究課題について議論した。
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