研究の初年度である平成11年度では、石油ショック以降の産業構造の変化を工作機械工業を中心に実証研究を行った。工作機械産業の構造変化の要因を、個別企業のデータとマクロデータの二つに基づいて実証研究を行った。まず、工作機械産業の成長がマクロ変数によって説明できるかどうか、工作機械生産額と、GNP、投資額、輸出額、自動車生産台数との関係を検証した。しかし変数の数が多いので、Akaike Information Citerionに従って変数を選択した。さらに、これを基礎にSUR(Seemingly Unrclated Rcgrcssion)方法によって、工作機械の需要関数を推計した。産業構造の時期の特定には、それを表すダミー変数を導入し、AIC値が最小になるものを選択した。このような分析によって1976年の第2四半期に構造変化が生じたことと結論できた。 さらに、電気通信産業を例にとって、規制緩和と経済構造の変化を検討した。日本の産業では、これまで産業の競争力を高める政策が取られ、消費者重視の政策は取られなかった。しかしながら、電気通信産業では規制当局による政策は、一貫して市場への競争の導入にあった。その目的はNTTの地域通信網の独占からくる市場での競争排除という「ボトルネック独占」排除にあるといってよい。これからの電気通信市場での新しい競争政策、とくに接続ルール、プライスキャップ制、ユニバーサルサービスは、日本経済にとって新しい規制であり、そのあり方を分析しした。
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