本研究は、(1)工作機械産業、(2)電気通信、(3)遠隔・在宅医療について行った。共通の問題意識は、構造変化を引き起こした技術革新とは何か、構造変化の特徴付けと類型化である。以下、分野ごとでの成果を要約する。 (1)工作機械産業。この分野で構造変化を起こした技術革新はCNC(コンピュータ化された数値制御)工作機械である。日本がいち早く革新をなしえた要因は、個々の部品での技術革新を統合した結果である。また、工作機械の需要関数をマクロ変数により説明し、SUR方法により推計し、構造変化の年を1976年の第2四半期と特定化した。 (2)電気通信産業。IT(情報技術)が構造変化に与える影響を分析した。この際、IT革命の基盤となる(ア)情報通信インフラの整備、(イ)ITのビジネスや生活への応用技術に注目した。前者については、競争(民間)および非競争(第三セクター、自治体)の枠組みで総括した。後者では、移動体通信端末の利用によるビジネスモデルや、次世代のインターネット・プロトコル(IPv6)が新分野となることを指摘し、次世代の経済を「mエコノミー」として位置づけた。 (3)遠隔・在宅医療。この研究では、実地調査を通じて遠隔・在宅医療を類型化し、特徴付けた。さらに、遠隔医療に用いる医療機器の技術革新が与える経済効果を次の二つの方法により推計した。 (ア)在宅ケアによる高齢者の社会的入院費の削減、(イ)WTP(Willingness to pay)手法による在宅健康管理システムの経済評価。前者は、CATV等を活用した在宅ケアにより、高齢者の入院費が約10%削減できるとの推計結果を得た。後者では、住民に対するアンケート調査により、住民の経済評価額を推計した。これらの一連の研究は、内外を通じてはじめてのものであり、電気通信学会賞等を受賞するなど高く評価されている。
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