本年度は、前年に引き続き、不完全市場を前提にした成長モデルの動学的性質の検討を行うと共に、独占的競争市場における最適化政策について具体的な検討をした。主要な研究結果は次の2点である。 1 不完全市場を前提にした成長モデルの分析 前年度の研究成果をもとに、本年度は2部門内生成長モデルにおける不決定性の発生について詳細に検討した。別掲の近刊論文("Indeterminacy and Endogenous Growth....")では、2部門モデルを利用して、外部性の存在を許せば、たとえ規模に関する収穫一定が成立しても不決定性は生じ得ることを証明した。また、既刊の日本語論文(「不決定性とサンスポット」)において、これらの研究結果の経済的意味について説明をした。 2 不完全競争市場における最適化政策 近刊予定の共同論文("Patent Length and Economic Growth")において、独占的競争市場を前提にした内生的成長モデルを用いて、技術進歩の速度とパテント政策の関連について分析を行った。これは従来ミクロ的にしか検討されていなかった問題であり、本論文は今までにないマクロ的視点からの研究結果を提供することができた。また現在投稿を準備中の論文では、不完全競争のマクロ動学モデルを利用して、市場の不完全性と最適課税政策の関係を分析した。
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