1) 対中東欧直接投資の各国別統計を比較可能なデーターベースにのせることは、かなり困難であることは、さまざまな統計の収集・加工、他の研究文献から判明したから、定量的比較から定性的比較に検討の課題を移す。 2) 対東欧直接投資関連の書籍の購入、日本の直接投資研究者と意見交流し、理論的整理を行った。対東欧直接投資が市場獲得型であることは、すでに拙稿で指摘したが、他の論者によっても再確認された。それが直接投資の隆盛を東欧の民営化の進展(掘り出し物買い)を結びつけていることが明らかになった。この型の直接投資はそれ自身の性格から、寡占市場の確保の程度に従って、流入量・速度が低下するはずであるが、引き続き増加傾向を示している。所有諸優位と立地優位、企業家論とのどのような組み合わせ(折衷)が説明要因になるのか次に検討する。また東欧地域での相互浸透の強化現象を確認できた。関連性の解明が今後の課題である。 3) 派生的研究として次のものを発表した。東欧の国際環境として、地域協力の発展が貿易・直接投資の希薄な関係の上に試行されていること、EU加盟は直接投資のための「ソフトな安全保障環境」をつくりだすことを明らかにした。外資企業の経営文化を検討して、それがハンガリーの経営文化の多様化、分化とイノベーションを引き起こしていること、現場労働者と経営者には異なる経営文化を作りだそうしている傾向があること、直接投資(多国籍企業)が労働市場へ多大な影響を及ぼしているが、雇用統計がないことを明らかにした。
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