1)対中東欧諸国直接投資の定量的比較から定性的比較に検討の課題を移し、各国の特徴の抽出を行なっている。ポーランド・ハンガリーグループとその他の中東欧諸国の間で、受入増加の質的・量的格差が発生している。明らかに国内市場の景気回復、体制転換の進行度合いがその差を引き起こしている。ロシアでは直接投資の撤退からの反転がまだ生じていない。 2)日本の対東欧直接投資について調査しているハンガリー研究者Szatmary Beataと数度に亙って「日本の直接投資戦略の中における中東欧の役割」に関する意見交換、研究会開催を行った。理論的整理では、Narulaの分類(貿易代替、貿易促進、貿易補完)、Dunningの分類(効率追求型、市場確保型、資源確保型、戦略的資産運用型)があるが、対東欧投資は前2者である事も再確認された。この型の直接投資はそれ自身の性格から、寡占市場の確保の程度に従って、流入量・速度が低下するはずであるが、引き続き増加傾向を示している。所有諸優位と立地優位、企業家論とのどのような組み合わせ(折衷)が説明要因になるのか検討したが、規定する決定的要因は確認できない。それが東欧の体制転換の進展のどの要因に結びつけているか、またEU加盟交渉がどのようなインパクトを与えるのか今後の課題である。直接投資の相互浸透については資料収集の段階である。
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