研究概要 |
本研究によって得られた主な研究成果は次のようである。(1)まず,一般的な行政規制メカニズムの最適デザインの設計が情報-インセンティブ分析をとうして明らかになった。とくに,分権的規制システムと階層的規制システムの比較が可能となった。(2)カルテル防止のエンフォースメント政策が繰り返し競争の構造のなかで明確になった。とくにペナルティ政策とモニタリング政策の代替性,当局に対する捜査協力ゲームの構造が明らかになった。(3)公共入札における入札方式のありかたを独占禁止法の観点から評価した。とくに,談合が可能な場合には競争的な場合にくらべて業者の留保価格が低くなることが示された。また,二つの場合の入札価格の期待値の大小は環境条件に依存することが明らかにされた。(4)寡占市場における水平合併について社会厚生分析を行った。合併による負のシナジー効果が存在するとき非効率な企業の吸収合併が社会厚生を高める可能性があることを示した。(5)契約法を法と経済学の観点から分析し、排他的取引がもたらす取引効率の問題を協力的投資に関するホールドアップ問題として分析した。その結果,参入者が市場支配力をもち,再交渉ができないときには期待賠償ルールが約定損害ルールにより効率的な取引を実現することを示した。したがって,市場支配力がどこにあるかによって排他取引の効率性が決まることが分かった。(6)抱き合わせ販売の違法性の問題を検討し,主たる財市場で市場支配力をもつ企業は,抱き合わせ販売によって従たる財市場でも市場支配力を行使することがとくに垂直的関係のもとでは可能であることが判明した。今後の研究計画としては,法の経済学と情報の経済学を基礎にした経済取引とエンフォースメント政策に関する研究をより総合的に進める。
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