理論分析:いずれの経済分野においても、そこでの経済活動は複数の個別経済主体(財・サービスの売り手と買い手、同一企業の社員など)の「(広義の)協力」によって実現される。しかしながら、「協力の範囲(協力参加の可能性がある個別主体の数)」と「密度(参加者の協力の程度、すなわち参加者間で交換される情報量)」は、分野ごとに異なっており、その分野の「協力」を情報的に特色づける。一般に、情報量が増大すれば「情報レベル」は高くなる。しかし、それが特定分野の「協力」に及ぼす影響は、種類ごとに異なる。それぞれの経済分野の活動を特色づけるこれらの要因を組織的に分類・整理し、実証分析を準備した。 実証分析: 相当数の「経済分野」について、それぞれの分野の「経済活動レベル」と「情報レベル」の日米間の差を「計測」し、複数分野にわたって両者の関係が存在するか否かを、それぞれの分野の特色(同分野における協力の範囲と密度)を考慮しつつ検証した。形式的には、「経済活動レベル」を「情報レベル」と「協力の密度と範囲」によって「説明」する計量分析である。 対象とした「経済分野」は下記の通りである。(1)製造業(自動車産業、家庭電器産業など)、(2)情報通信産業(コンピュータ産業、テレコム産業、放送産業、ネットワーク・サービス、応用サービスなど)、(3)資産・資金関係(金融、不動産、特許・知的財産権など)、(4)サービス産業(運輸、交通、商業、金融デリバティブ、保険など)、(5)株式会社と株主、(6)公的規制当局と事業者(テレコム、電力、金融、薬品など)。それぞれの分野について、経済活動レベルを表す指標(たとえば製品・サービスの場合は相対価格)を選び、日米両国の格差指標を作成した。また、それぞれの分野について、経済活動の基盤となる情報を種別ごとに収集し、適切な手法を選んで「情報量」指標を構成し、両国間の「情報レベル」格差指標を作成した。
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