本研究は、測定誤差のある経済データを解析するための計量経済学的手法の開発とその応用を目的として行われた。また、計量経済学の手法は、実際のデータの解析に用いられてこそ、その有用性が明らかになるとの考えから、本研究で開発された手法をEngel関数や多品目消費関数の推定等の実証分析に応用した。 まず、説明変数に測定誤差のあるモデルのBayesian推定法の開発を行った。実調例として、HOGLEX需要モデルにおいて、総支出に測定誤差を導入し、タイ及びフィリピンの個票データを用いた実証分析を行った。 次に、説明変数及び被説明変数に測定誤差のあるモデルのBayesian推定を考察した。ここでは、単に説明変数と被説明変数に測定誤差があるのみならず、それらの測定誤差が互いに相関している場合の推定法の開発を行った。実証例として、Working-Leser型のEngel関数体系の推定を考え、イギリスの個票データを使用して実証分析を行った。 また、需要モデルのBayesian推定を行って得た事後分布からのサンプルを経済不平等度の計測に利用する手法を考案した。実証分析例として、総消費の対数の2乗の項を含む一般的なEngel関数体系の推定をイギリスの個票データを使用して行い、Bayes factorによってモデル選択をした後、選択されたモデルの事後分布からGini係数及び一般化エントロピー測度の推定を行った。 以上の研究成果を数本の論文にまとめ、現在、海外の専門誌に投稿中である。また、その内の1本の論文は既に、共著者により、シドニーで開催された1999 Australasian Meeting of the Econometric Society(July 1999)において発表されている。
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