共和分分析の内でも特にベクトルARMA過程に研究の焦点をあてる。従来の共和分の研究は、世界的にもAR過程にのみ関心が払われて分析が進んでいる。またベクトルMA過程の研究も多少見られるようになってきた。そして、この研究プロジェクトではARとMAを統合するARMA過程から、検定および推定を考え直すのである。単一変数については、論文3と6で一応の方向性と成果を見ている。この様な研究により、共和分の推定法も大きく変わると考えられる。従来この方面での研究は知られていない。 実証分析的には、自己回帰の方が直感性に優れているわけで、その点においても、かなう限り自己回帰によって自己回帰移動平均モデルを書き直していき、その際の精度の減少具合、ならびに精度を測定する測度を開発することが重要であろう。 "Discontinuous Trend Unit Root Test"で行った非定常分析を、ベクトル過程に拡張した。また単位根検定に関する、サーベイ論文を日本統計学会誌に掲載した。さらに、ニュージーランドで開かれた学会においても、基調論文を報告し、同学会の「1999 MSSANZ MEDALLIST」に選ばれ、メダルを拝受した。この論文では定数項ならびに確定トレンド項を含む検定を、新しい観点から考察し直している。マクロ系列を用いて実証的な研究を行っているが、この様なマクロ系列に関する実証研究も最近の私の研究スタンスである。従来より柔軟な推定ならびに検定の方法を用いているので、経済学的に納得のいく結果が得られた。
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