外航定期船産業においては、海運自由の原則により伝統的に政府規制は基本的に存在しないが、特殊な費用構造や需要変動などによる破滅的競争の回避、運賃及びサービスの安定のねらいから海運同盟が独占禁止法適用除外を受けるのが一般的である.4年計画の本研究の初年度として、まずこの海運同盟の成立・発展、盟外船社台頭・結東弱体・運賃下落、同盟統廃合・再編の経緯をレビュー・分析した.特に1960年代終わりがら70年代初めのコンテナ化による技術標準化、そして競争促進規定を設けた1984年の米国新海運法の影響があらためて大きくクローズアップされる。 次に同盟の評価についての基礎理論の構築を目指して、ミクロ経済学的手法やゲーム理論的手法を用いて、理論的な示唆を探求した.この結果、結束力のある同盟の場合でも同盟船社同士の船腹拡大競争により利潤低下が起こること、アウトサイダー(盟外船社)の存在によりクールノー・ナッシュ均衡において同盟船社の方が不利になるケースがあること、盟外船社台頭後の一時に高サービス水準の同盟船社と低運賃水準の盟外船社の差別化競争が起こり戦略的補完性や荷主の2変量効用関数による分析可能性がでてきたが長く続かなかったこと、などが明らかになってきた。 1996年を元年としたグローバル・アライアンス(G.A.)についても、いち早く分析の対象とした本研究であるが、1、2年間の激しいG.A.再編の動きをモニターすることができた.その結果、G.A.は従来の提携に比べて確かにコスト削減・ネットワーク拡大の効果は見られたが、この再編の動きの動機と影響を分析する必要が出てきた。 一方、運賃面では、引き続き低下傾向が見られ、同盟の分析と共通する点がある.同時に、G.A.に飽き足らない合併・吸収の動きが出てきており、同盟・提携・G.A.・合併をより明確に整理して、モニター分析や理論分析を次年度以降進めていく必要が認識される.
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