外航定期船産業においては海運自由の原則により伝統的に政府規制は基本的に存在しないが、特殊な費用構造や需要変動などによる破滅的競争の回避、運賃及びサービスの安定のねらいから、19世紀の終わり頃から海運同盟が独占禁止法適用除外を受けるのが一般的であった。1960年代終わりからのコンテナ化による技術標準化や競争促進規定を設けた1984年の米国新海運法の影響などによる盟外船社台頭・結束弱体・運賃下落、同盟統廃合・再編の経緯を分析してきたが、1998年の米国改正海事法でサービス・コントラクト規定が強化され、ついに対米航路では同盟が事実上崩壊したので、この分析を詳しく行った。 1996年を元年としたグローバル・アライアンス(G.A.)についても、いち早く分析の対象とした本研究であるが、1、2年間の激しいG.A.再編の動きから、1998年に進展したさらなる集約化・統合化を捕らえることができた。その結果、メンバー間の調整コストのマイナスと従来の提携に比べたコスト削減・ネットワーク拡大の効果が確認できた。 同盟の評価についての基礎理論の構築を目指して、ミクロ経済学的手法やゲーム理論的手法を研究してきたが、同盟船社同士の船腹拡大競争による利潤低下、盟外船社の存在・台頭によるクールノー・ナッシュ均衡においての同盟船社の不利・盟外船社台頭後の一時に高サービス水準の同盟船社と低運賃水準の盟外船社の差別化競争、アライアンスによる効率化・リスク費用などのモデル化の準備を進めた。このような理論手法やDEA手法・経済指数分析などの方法も準備しており、アライアンス深化、合併、同盟・航路安定化協定への独禁法適用などの政策課題の分析にこれから入っていくこととする。
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