本年度は、3年に及ぶ計画の初年度として2つの作業を課した。その1つは、家族介護者の規模と構成についての検討、いまひとつは、家族介護者の担う介護労働の時間分布と平均労働時間及び総労働時間の算出である。 このうち前者については、中央人口統計調査局「国勢調査」85年版と90年版及び95年版を手掛かりに全国レベルの計数をはじき出した上で、これをもとに3つの自治体(ロンドン・サットン自治区、イーストサセックス州、ポーイス州)における家族介護者の規模と構成について推計し、あわせてアメリカをはじめオーストラリア、ニュージーランド等の諸国における家族介護者の規模と構成との比較をおこなった。この種の国際比較の試みは、国際的にみても数少ない作業のひとつでる。 いまひとつの作業については、家族介護者の担う介護労働の経済的価値の算定方法について諸家の見解を整理しはじめている段階であり、今のところ定まった結論を得ていない。議論は、イギリスはもとよりアメリカ、オーストラリア及びニュージーランドなどの国々でもおこなわれ、これといった定説のない状況である。また、介護労働を直接の主題にしていないものの、家事労働の経済的な価値の算定になると、わが国も含めてさらに多くの議論があり、これらの整理にも取りかかりはじめたところである。今後はこれらの議論を整理した上で私見を得、介護労働の経済的な価値の算定に進みたいと考えている。
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