本年度は、3年に及ぶ計画の第2年度として3つの作業を行った。 そのひとつは、これまで収集した4600点以上の文献を一覧として整理し公表したことである。 いまひとつは、介護労働の経済的価値についてイギリスのある地方自治体を事例に算定し、その結果を単著に収録し公表したことである。 最後に、介護労働の経済的価値の算定作業の政策的な含意とこれをめぐるイギリス及び国際的な動向について文献を収集し、その検討に着手したことである。 この種の算定作業は、もっぱら学問的な関心にとどまるわけではない。介護労働の経済的な価値の算定を通して家族介護者支援策の理論的な拠りどころを得ることこそ、見おとすことのできない意義がある。本研究では、こうした関心に沿って関係する文献の収集にのり出したところであり、収集の対象国は、イギリスにおける議論の位置を探るためにもイギリスはもとよりアメリカ、オーストラリア、フランス及びスウェーデンなどである。 提出されている論点は、収集した文献を見る限り家族介護者の年金受給権と介護期間の算定、介護費用の補填と介護期間の所得補償、休憩請求権の制度化と休憩の享受による介護時間の短縮におよぶ。これらの論点の立ち入った検討は、文献の一層の収集とあわせて13年度の課題である。
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