ロシア経済は98年月に通貨危機を引き起こし、世界同時不況のひとつの極になった。この経済危機は安定化政策だけにその要因を求めることはできず、ロシアに形成されている金融機関と企業の独自の資本関係および利益取得行動、政府の金融機関保護行勤にもとづくものである。本研究は、市場移行以来ロシアに形成された金融機関の行動を実証研究することにより、日本の企業集団に相当するメインバンクを軸にした集団が形成され、レントシーキング行動を強めていること、金融危機に伴いその集団に分離・集中などの再編が生じ、それに対応して政府の経済政策も転換していることを明らかにしている。 ロシアの経済政策に関しては、産業政策を検討することにより金融・産業部門・地域の側面でグループの影響力が作動しでいることを実証研究し、1998年比較経済体制学会(北陸大学)の共通論題「市場移行における政府の役割」で報告した。関連して、当該の経済政策が市場移行諸国間で段差があり、EU東方拡大が影響していることを明らかにした(ロシア・東欧学会共通論題討論者)。また、ハンガリーで聞き取り調査を行った。 次に、金融機関の行動にかんしては、グループ形成において金融危機を引き起こす要因、金融危機に伴う金融・産業グループにおける所有・支配構造の変化、政府との関係の変化を実証的に検討した。とくに、金融危機に対する処方箋の検討により、政府の資本市場に対する影響力の拡大、グループの生き残り行動を明らかにしている。本研究は98年4月に英国スラブ東欧学会で報告し、その成果を発展させて国内の複数の学会で報告し、さらに99年3月英国バーミンガム大学で討論する。 本研究は国際的共同研究のための基盤形成も課題としており、学会報告だけでなく学会動向を紹介することにより英国、ロシア、ハンガリー、韓国等と研究交流を拡大した。
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