ロシアにおける金融機関および企業の行動を分析することにより、ロシアに形成されている市場の特質が明らかになる。本研究ではロシア市場にもっとも典型的な企業の行動様式であるレントシーキング、未払い、バーターなどの非通貨決済を分析し、その行動様式が政府・企業・銀行・労働者の利害調和のうえに形成され、安定的であることを実証研究した。このことは、ロシアでは外見的な政治の不安定さにもかかわらず、経済政策が安定的であること、既存の行動が98年8月経済危機後にも温存され、ロシアに独自の市場を生み出す基盤になっていることを意味する。本研究は体制転換から10年間の市場移行経済の比較研究において、市場移行諸国間での市場モデルの類似性と相違制を明らかにするものである。なお、1999年10月〜12月にモスクワ大学に所属して、本研究に関連する現地聞き取り調査およびロシアの経済学者、調査機関との研究交流を行った。 本研究は1999年ロシア・東欧学会第28回大会(鈴鹿国際大学)の共通論題において「ロシアの市場移行:移行10年の教訓と展望」の論題で報告するとともに、関連する国内の研究会、学会で報告、講演を行なった。さらに、本論題に関連して、ロシア社会の独自性を実証的に検討するモスクワ大学経済学部政治経済学講座国際理論セミナー「21世紀へのロシアにおける社会経済システム」(モスクワ大学)にも招待講演者として報告するとともに、モスクワ大学において"Some Basic Features of the Russian Transformation"のテーマで政治経済学講座移行理論講義を行った。 また、ロシア経済にたいするグローバリゼーションの影響を明らかにする研究を行い、1999年比較経済体制学会(横浜国立大学)で討論者として共通論題に参加するとともに、国際学会(モスクワ)「資本主義の世界的危機とポストソビエト諸国」にも報告した。
|