今回の研究では、大卒ホワイトカラーに関して彼らの外国語能力が所得および職位に与える影響を可能な限り正確に捉え、外国語、特に、英語の経済活動における価値を経済学的に分析することを目的とした。 外国語能力のレベルをできるだけ具体化するために、言語の種類に加え英語検定やTOEFULのスコアーも調査項目に含めるとともに、会話能力のみならず読み書き能力も調査した。また、履修成績および大学院卒等の要因も探ることで、大学教育の効果も測定可能な形で調査を行った。調査対象は、教育の内容をコントロールするために、特定大学の特定学部卒業生とした。 アンケート調査から得られたデータは、稼得関数を推定するという方法で分析された。特にこれまで他の研究で使用されてきた、教育年数、年齢、企業内経験年数等の変数に加えて、新たに英語能力という技能変数を追加して分析を試みた点に本研究の特徴がある。 分析の結果次のようなことが明らかになった。現在の国際経済社会における英語の重要性を考えると、たとえ日本国内の経済活動においても、英語を身につけているかどうかにより経済的地位に大きな差が出る可能性がある。 より具体的には 1)現在英語を仕事で使用している者たちは、就職後仕事をしながら習得している。 2)彼らのうち10%ほどは、かなり高い英語能力を身につけている。 3)彼らは昇進においてかなり優位にある。 4)また、推定結果は英語能力のない者よりも20〜30%も高い所得を得ている可能性を示している。ただし、調査対象が比較的レベルの高い大学卒業生に限られていること、キャリア形成のプロセスに関する変数が不十分であること等の課題が今後の研究に残されている。 研究成果は平成12年度に日本教育社会学会、日本経済学会で発表される予定である。
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