公的企業の民営化や規制緩和が重要な政策課題になっているなかで、政府と民間営利企業の間にある第三の組織形態として民間非営利組織の役割が注目されている。 この研究プロジェクトでは、この民間非営利組織の役割に注意を払いつつ、医療・福祉、教育・研究といった社会サービスを供給する担い手としての公的企業、民間営利企業、民間非営利組織のそれぞれの役割と競争のあり方を、比較産業組織分析の手法を用いて明らかにしてきた。 特に、様々な社会サービスの市場において、これら3者の間の役割分担や競争は、どのように異なっているか、異なる所有形態の間の競争(オーナーシップ競争)は、時代とともにどのように変化してきたか、同一市場で、異なる組織形態の供給者が競合している場合の競争政策はいかにあるべきか、異なる所有形態の間の役割分担は国・地域によってどのように異なるか、また共通性は何か、といった論点を解明するのが本研究の目的であった。 最終年度にあたる本年度においては、これまで3ヵ年の研究成果を踏まえ、海外主要国において、医療・福祉・文化・教育などの各種社会サービスの供給がどのような組織形態によって行われているか、特に民間非営利組織(NPO)が、各市場の中でどのような地位を占めているか調査し、NPOの他の組織形態と比較したパフォーマンスについて分析した。そのうえで、日本を含めた国際比較分析を行い、各国共通に見られる特徴、国ごとに異なる特徴を整理した。 さらに、これまでの、分野別、国・地域別の現状分析をふまえ、理論的な分析と整合的かどうか、理論の現実説明力がどの程度あるか、を検討した。 4カ年にわたる成果をとりまとめ、日本NPO学会、全米非営利セクター学会など、内外の学会等で報告した。
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