1 社会的市場経済論争の意義について二次の命題を検証した。 ・ 社会的市場経済の変質は直接的にはとりわけ分配をめぐる利害の対立を契機としてもたらされた ・ 社会的市場経済の構想では「体制整合性」と「補完性」の原則がそのような変質の歯止めの役割を果たすとされるが、それは多義的な解釈を許すために現実の政策形成過程では部分的にしか機能しない ・ 政策形成制度が社会的市場経済の構想に沿った政策展開を困難にする可能性があり、所得分配の格差を縮小する点では有利であるが分配面での歪みをもたらした。 2 所得分配構造の動向の追跡 SOEPデータの利用環境の整備。 ・ アンケート原文の日本語訳の完成。ドイツ経済研究所の許可をえてアンケート調査の詳細を明らかにした。 ・ SOEPのパネルデータ・セットを用いて勤労者世帯の職業、世帯人数、世帯主年齢・学歴別の所得分布を推計するプログラムを作成した。 3 所得分配構造の変化の要因分析 ・ SOEPデータを中心に近年のドイツの所得分配構造の推移を調査した。 ・ 分配構造変化の原因を産業構造、学歴、女性の社会的進出、再分配政策の変化から説明するモデルを構築し推計した。 4 equivalent scaleの推定 ・ これについては当初予定したレベルの推計はSOEPデータでは不十分であることが作業中に判明した。平成11年度にあらためて他のデーター・ベース(Luxemlbourg Income Studyなど)の利用申請を行い課題を遂行したいと考えている。 * 成果の公表予定 項目1: 平成11年5月の日本経済政策学会で報告する 項目2および3: 現在『国民経済雑誌』および『神戸大学経済学研究』に投稿準備中
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