研究成果の概要 1.社会的市場経済をめぐる最近の議論の展望 (1)内外の学術雑誌に掲載された社会的市場経済及びドイツの所得分配に関する文献目録を作成し、そのうちでも重要と思われる外国文献について翻訳しファイルとして保存した。 (2)ドイツ新自由主義の秩序政策論の諸系譜の相互関係を明らかにし、とりわけフライブルク学派の政策構想と社会的市場経済構想の異同について論じた。また新社会主義の流れに分類されるK.Schillerが中心になって立案、構想された社会的市場経済の第二局面(開明的市場経済)と新自由主義系の構想について比較検討し両者の特徴を明らかにした。 (3)ドイツ新自由主義の政策構想とドイツ経済の発展を関連づけて考察し、政策構想が経済政策実践及び現実経済の発展に有する意義について論じ、それが有効であるための制度的条件を明らかにした。 2.SOEPデータを利用した分配構造の調査 (1)SOEPデータの構造、性格について考察し、それを利用した諸研究をサーヴェイすることを通して分配問題への応用の状況について調査した。 (2)LIS(リュクセンブルク所得研究)のパネル・データを併用して社会的市場経済の所得分配構造の特徴を明らかにした。なおこの部分の分析結果についてはLISのワーキング・ペーパー・シリーズに採択された後に公表する予定である。 (3)3種類のスケールを利用して世帯間の所得分配構造の変化を推計した。また異なるスケールの採用による分析結果への影響(sensibility)について推定し、不平等の順位には大きな影響はでないが、不平等度そのものには無視できない影響が及ぶことを示した。 (4)ernings mobilityが社会保障制度によってどのような影響を受けるか分析した。 (5)B.M.S.van PraagとN.L.van der Sar方式によるスケール作成を行った。所期の結果はえられなかったが、この方式のもつ限界を明らかにすることができた。
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