両国の経済構造改革政策に学ぶべき点の第1は、両国政府が1980年代から取り組んできている経済構造改革は、両国において程度の差、スピードの違いはあるけれども、一つの部門や分野にのみ限定された改革ではなく、貿易、資本取引、為替、金融、労働市場、税制、公共企業、教育制度など国民経済全体にわたる改革であり、特定のグループの特権や特定の利害集団のための規制を撤廃して、国民が自己の責任の下に、競争あるいは市場を通じて利益を追求していくメカニズムを創り上げたことである。第2はこの改革は、短期的ではなく中・長期的な視野にたって行われたことである。1980年代に始まった10数年にわたる努力の成果がようやく実をむすんだことを認識しなければならない。第3は労働市場のような重要で、硬直的かつ伝統的性格を持つ市場で徹底的な改革が行われたことである。ほとんどの国民が直接的に利害関係をもち、しかもマクロ経済のパフォーマンスに重要な影響を与える市場の改革に踏み込んだ国民と政治家の覚悟に学ばなければならない。第4は、とくにNZにおいて顕著にみられる、公共部門の運営におけるアカウンタビリティの強調である。すなわち部局の責任者に明確な目標とそれを達成するための権限を与えた上で、自らの成果について国民に説明し、責任を明らかにすることを求めたことである。この事によって、公共サービスに付いての透明性が確保され、責任の所在が明確となった。
|