著書『最適都市規模と市町村合併』は、「地方財政からみた最適都市規模及び市町村合併の効果に関する実証的研究」である。その方法は、まずデータにもとづいて、都市規模と地方財政の関係に関するファクト・ファインディングを導出し、そこから得られる一般的傾向性にもとづいて、最適都市規模、地方財政の評価、市町村合併の地方財政への効果等を定量的に解明しようとするものである。 その結果得られた主要な帰結は次のとおりである。 まず、一般的な傾向性としては、全国の市については、対数表示の人口当たり基準財政需要額、歳出総額、人件費及び地方交付税は、対数表示の人口数の「下に凸の2次関数」として極めてよく説明される。同様に、対数表示の人口当たり基準財政収入額及び地方税は、対数表示の人口数の「右上がりの3次関数」として極めてよく説明される。また、対数表示の財政力指数は、対数表示の人口数の「上に凸の2次関数」として、極めてよく説明される。 この一般的傾向性より、最適都市規模について次のような興味ある結果が得られる。すなわち、全国の市について、地方財政の観点からみた最適都市規模は概ね人口30万人弱である。これより小さい都市規模では規模の経済が働き、大きい都市規模では規模の不経済が作用する。 また、市町村合併の地方財政への効果につては、全国の341広域市町村圏の2929市町村が圏域毎に合併した場合の効果は、歳出面からみれば、歳出総額3兆7100億円(平成6年度実績の12.9%)の節減、人件費8100億円(同14.6%)の節減、基準財政需要額2兆5900億円(19.8%)の節減、また歳入面からみれば、地方税1兆6300億円(同19.2%)の増収、地方交付税3兆8500億円(同58.3%)の節減、基準財政収入額1兆200億円(同13.9%)の増収、さらに財政力指数0.234ポイント(同42.0%)の上昇、歳出総額/地方税比率0.91ポイント(同27.0%)の低下であり、いずれの場合にも効果はプラスである。
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