本研究の目的は、(1)全国3000余の市町村を対象として、地方財政の歳入・歳出の諸項目について、都市規模との間の一般的関係を導出し、それによって、(2)都市集積の経済性を地方財政の観点から実証的に明らかにすること、また、(3)地方財政からみた適正都市規模を示し、(4)現存の広域市町村圏等について、市町村合併の効果を地方財政の観点から数量的に推計することであった。 3カ年の研究を通じて、研究目的を予定通り達成し、別記の通り多数の研究成果を公表し、学会・地方自治体等における市町村合併論議に際して引用されている。その主要な知見は以下の通り。 (1)市の人口当たり歳出(対数表示)は、人口規模(対数表示)に関して「下に凸の2次関数」の関係がある。(2)市の人口当たり歳入(対数表示)は、「自主財源」については、人口規模(対数表示)の「右上がりの3次関数」、「依存財源」については「下に凸の2次関数」の関係がある。(3)地方財政からみて、市の人口規模30万人程度までは都市集積の経済性が認められ、それより大規模となると不経済性が認められる。町村については、都市集積の経済性のみが認められる。(4)地方財政からみた適正都市規模は概ね人口20〜30万人程度である。(5)これらの結果を用いると、現存の341広域市町村圏が合併して341市を形成する場合、歳出総額は年間3兆7千億円(約13%)の節減が見込まれる。この節減額は、高速道路建設で東京・岡山県新見間の建設費に相当する。 本研究では、行政サービスと都市規模の関係は主要テーマではなかったが、行政効率の導出に際して、試論的にこれを試みた。その結果、(6)市の人口当たり行政サービスは人口規模に関して「上に凸の右上がりの関数」であり、行政効率(行政サービス/人口当たり歳出総額)は人口24万人程度が最も効率的であることが分かった。この点は今後も研究を続けたい。
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