本研究は、島嶼地域の経済発展のメカニズムを経済自立の観点から解明し、当該地域の共生的発展のための有効な戦略を提案することを目的としている。今年度は、沖縄県(石垣島、西表島)、長崎県(五島列島)、鹿児島県(奄美群島)の島嶼地域について現地踏査を行い、これらの地域を中心にデータベースを作成し、人口動態、産業別就業構造、市町村財政、地域産業振興の実態について分析した。 まず、高度経済成長期以降、全国の島嶼地域では人口の減少が続いている中にあって、五島列島や奄美群島も例外ではない。しかし、沖縄の離島では石垣島や西表島のように人口が微増している地域がある。後者は、観光振興による交流入口の増加によるものである。 島嶼地域における産業構造は、サービス業と小売業・飲食店、建設業の3部門に特化しており、観光と公共事業に依存した他律型構造である。財政的にも自主財源比率は1割を割っており、依存財政と物的生産部門の脆弱性が表裏一体となって表出している。 確かに島嶼地域の農林水産業の比率は、都市地域に比べて高いが、当該地域の経済を支える産業の柱とはなっていない。しかし、今回踏査した地域では、第1次産品を加工した特産品開発に努めていて、島嶼経済の自立へ向けた挑戦は始まっている。 特産品開発に当たっての課題には、付加価値の高い商品開発、販路開拓等のマーケティング、流通・輸送ネットワークの整備、地域資源の開拓、担い手となりうる人材の確保、資金面の手当等々が山積している。ハード面の課題よりもソフト面の課題解決が、島嶼経済の自立化支援策である。
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