はじめに 本報告は次の3つからなっている。まず、第一には日本おける「少子化」を基軸とした家族の再生産をアジアにおける家族政策や欧州における子育て支援との関連性で分析した。ついで、第2では日本において出産をめぐる家族の支援体制として根強く残存する「里帰り分娩」の実態から家族の自助原則を家族の含み資産の視点から分析した。最後に社会的階層(家業の生業による家族の地位)と家族の規模・子育て支援についてy県下の5市町村の聞き取り調査から分析し、地方都市と農山村における家族の再生産を考察した。 結果および考察 厚生労働省の報告によれば平成13年度の合計特殊出生率は1.35であった。対前年比では若干の上昇はあるものの「少子化」傾向に歯止めはかかっていなかった。地域格差では地方都市における全国版サラリーマンは子供の数を制限し、自営業、その中でも農村では複数の子供を育てていた。また、日本に古来からの風習である「里帰り分娩」の実状から家族の含み資産を前提とした家族の自助原則が循環する家族には複数の子供を育てる素地があった。一方、中国の一人っ子政策の実態では大都市では家族政策として実施されていたが、地方や少数民族にはこの政策が適応されていないこともわかった.また、韓国では本邦に追随する形で「少子化」が進み、特に都市部ではその傾向が強く、地方農村部ではいまだ複数の子供を育てる傾向がみられた。これに対して欧州では1995年以降から出生率が若干ながら上昇し、合計特殊出生率も上昇していた。背景には夫婦共働きやワークシェアリングの実施、子育て支援の外部サービス化や社会保障の確立であった。つまり、今後、若年労働力の増加・男女共同参画の社会形成には欧州の形態をも参考にし、日本固有の子育てを模索する必要がある.
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