研究概要 |
社会保障と私的保障(自助)の調整,従って,その中間に位置し,両者を結ぶ企業の福利厚生制度が,各国の経済・社会政策上の重要政策課題となっている。わが国においてこの福利厚生の中心として活用されてきたのが,団体定期保険である。ところが,本来の趣旨である遺族保障を離れ,企業の事業活動に使われていることが大きな社会問題となっている。この問題は,わが国における社会保障と福利厚生のあり方,労使関係,日本社会全体の問題として学際的研究が要請されているが,今までのところ,十分な研究がされていない。 本年度は,10月末の追加採択と限られた時間であったが,研究代表者によるこれまでの研究成果に立脚して,望ましい企業福利厚生のあり方を考察するとともに,経済政策,社会政策,社会保障の理論課題をも明らかにするように努めた。具体的には,団体定期保険と企業の福利厚生問題の紛争処理に従事している弁護士等から,紛争事例の聴取,さらに判例研究をし,問題群の析出・分類・可能な改善の方策の検討をした。また,アメリカを中心に欧米の団体定期保険と日本の企業文化に関する資料収集・検討を行った。今後は,ひきつづき,資料収集,聴取,企業,遺族,労働組合等への調査を続行する計画である。
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