社会保障と私的保障(自助)の調整、従って、その中間に位置し、両者を結ぶ企業の福利厚生制度が、各国の経済・社会政策上の重要政策課題となっている。わが国においてこの福利厚生の中心として活用されてきたのが、団体定期保険である。ところが、本来の趣旨である遺族保障を離れ、企業の事業活動に使われていることが大きな社会問題となっている。この問題は、わが国における社会保障と福利厚生のあり方、労使関係、日本社会全体の問題として学際的研究が要請されているが、今までのところ、十分な研究がされていない。 本年度は、研究代表者によるこれまでの研究成果と前年度の作業に立脚して、特に保険約款に関する資料収集と検討を行った。団体定期保険の本旨が遺族保障であることは疑問の余地がないにもかかわらず、保険契約上の法律関係の内容を具体的に表示する団体保険約款の研究はほとんどされてきていない。保険約款をふまえて、(1)企業の「経済的損失(逸失利益)」の主張、(2)「他人の生命の保険契約」における「同意主義」の形骸化、(3)「保険契約関係」と「内部関係」(企業の労使関係)の関連性について考案した。
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