昨年度までの研究成果を踏まえ、今年度は(1)直接投資の持つ金融的側面に関する理論・実証研究、(2)企業のフラグメンテーション・内部化と国際化の持つ含意に関する理論・実証研究、(3)最近の直接投資の質的変化を踏まえた理論的枠組みの構築に向けての研究を行った。 (1)に関しては、より深い経済統合が進んでいるヨーロッパについての実証的観察を踏まえ、実物面と金融面を同時に視野に入れた理論モデルを構築中であり、近日中に論文執筆に入る予定である。(2)に関しては、日系企業がアジアで展開している生産ブロックのフラグメンテーションについてケーススタディを行い、それを論文にまとめた。またフラグメントされた生産ブロックを結ぶサービス・リンクの一形態としての企業内貿易について、マイクロ・データを用いた実証研究を行い、論文を執筆した。さらに、1994年度以降4カ年にわたるロンジテューディナル・データの整備が一段落し、使用可能となったので、それを用いた実証研究の第1弾として、グローバリゼーションが進行する中での日本企業の存続・退出についての論文をまとめた。(3)については、近年急増しているM&A形式の直接投資と従来からのグリーンフィールド形式の直接投資の違いについて文献サーベイを進めるとともに、M&A統計を集計する上での諸問題の検討に入っている。 来年度は、さらに理論面と実証面を融合させた分析枠組みの構築を進めていく予定である。
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