本研究は、米国のオープンスカイ政策の過程を考察し、それが航空交渉にいかに組み込まれ、国際航空レジームの変容にどのような影響を与えつつあるのかについて総合的に考察するものである。国際間における航空交渉の経済的影響について比較検討を行うことによって、国際航空自由化の課題と展望を探り、我が国の国際航空政策への示唆を得ることを狙いとしている。 本年度は、オープンスカイ政策と国際航空システムに関する分析方法に関し、研究動向に鑑みて理論的整理を行った.さらに、オープンスカイを主導する米国の国際航空政策と国際航空システムの転換期を確定し、国際航空システムの形成過程における米国の介入と政策スタンスの特質について検討を重ねた。分析によって、90年代半ばを境に2つの時期の区分が可能であること。その時期を画するのは95年新国際航空政策であり、これ以降の政策展開については、米国の国際輸送力の拡大などを目的とし、オープンスカイ政策の推進とアライアンスの浸透の相乗的な施策に特質がみられること。アライアンスを含むオープンスカイの推進に反トラスト政策の緩和が影響しているなどの諸点を明らかにした。また、消費者便益などを含む競争の促進効果にポジティブな面がみられ、その点で評価できるものの、反面、一部に、大規模なハブネットワークの構築によって、独占的市場支配力が強まり反競争的な効果が生み出される可能性が存在すること、そのために、消費者保護の観点から、競争経済体制の確保の観点にたった国際間での基本的な法律のハーモニゼーションについて具体的な検討が求められる点などを指摘した。今後は、航空交渉を類型化し比較を行ったうえで、オープンスカイ政策の形成要因と具体的な展開過程の特質について系統的かつ具体的な考察を進める予定でいる。
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