世界の航空業界では、80年代以降、規制緩和と自由化が潮流になっている。国際航空は、基本的に従来の二国間協定の枠組みは変わらないものの、そのなかで、参入、運賃など経済的規制面での自由化をおりこんだ航空協定の終結が相次ぎ、その結果、国際航空市場競争が促進し、国際航空レジームにも変容をきたすようになっている。この主要要素の一つが、米国のオープンスカイ政策である。本論分は、米国のオープンスカイ政策の過程を考察し、それが航空交渉にいかに組み込まれ、国際航空レジームの変容にどのような影響をあたえつつあるのか、その政策導入に伴う航空企業の戦略対応などについて総合的に考察するものである。また、国際間における航空交渉の経済的影響について比較検討を行うことによって、国際航空自由化の課題と展望を探り、我が国の国際航空政策への示唆を得ることを目的としている。 本年度は、オープンスカイ政策が本格化する90年代以降の米国の国際航空政策について、包括的戦略目標と具体的内容について検討を行い、これにもとづく航空交渉のパターンについて比較検討を行った。これによって、米国のオープンスカイ政策について、段階性と、グループ別対応などの面での特徴を指摘した。また、この政策は、消費者保護、国民経済への寄与などの多元的政策目標を包含しており、ネットワークの拡充とコードシェアリングの経済的合理性の確認を含んでいるのが分かった。国際的複合ハブネットワークの構築のために、オープンスカイ協定と戦略的提携の相乗的な推進効果が期待されている。戦略的提携には寡占的弊害のリスクも懸念されるが、競争促進上、これを補ってあまりあるのがオープンスカイ協定である。このことから、反トラスト法の適用除外がオープンスカイ協定の終結を前提に承認される経過を指摘した。今後は、オープンスカイ政策の促進・制約要因について、各航空交渉を事例にとりあげ究明を行い、あわせて、国際航空システムの変容に与える影響と効果・問題点について検討を行っていきたい。
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