本研究の目的は、米国政府が主導するオープンスカイ政策がいかなる展開過程を経て、いかに航空交渉に取り込まれてきたかを解明し、あわせて、その政策によって国際航空システムがどのように変容してきたかについて考察することにある。 研究過程において、米国のオープンスカイ政策と国際航空システムの転換期を確定し、国際航空システムの形成と展開の過程における米国の介入と政策スタンスの特質について検討を重ねた。これによって、90年代半ばを境に2つの時期区分が可能であり、オープンスカイ政策の推進とアライアンスの浸透の相乗的施策による展開の特質とその影響が示された。分析によって、国際システムについては、IATA統制力の低下、二国間協定の自由化、地域的多国間主義の波及などの特徴的な変容面が明らかになって。オープンスカイが本格化する90年代以降の米国の国際航空政策については、包括的戦略目標に特徴がみられた。実際の航空交渉にあたっては、交渉相手の規制環境などの状況によって弾力的に対応し、全体として、段階性とグループ別対応などに差異がみられた。オープンスカイ航空交渉の展開と制約の要因について、米加航空交渉、日米航空交渉を事例にとりあげ具体的な検証を行なった。これらの比較によって、政策決定過程の差異と実行上のセーフガードの措置について政策的含意が示された。将来の国際航空システムの方向性は確定しにくいが、アライアンスが多国間主義の方向性に影響を与えていく可能性が指摘される。今後の重要な課題として、カボタージュ撤廃の可能性、国際航空市場への反トラスト法の適用の範囲と適用可能性について検討を重ねる必要があることを示した。
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