研究課題/領域番号 |
10630062
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研究機関 | 四日市大学 |
研究代表者 |
稲垣 秀夫 四日市大学, 経済学部, 教授 (70159937)
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研究分担者 |
鎌田 繁則 名城大学, 都市情報学部, 助教授 (70214509)
森 徹 名古屋市立大学, 経済学部, 教授 (60134160)
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キーワード | 医療報酬支払制度 / 実験経済学 / 医療経済実験 / 包括支払制度 / 出来高払制度 / 医療機関選択 / コンピュータ・ネットワーク |
研究概要 |
平成11年度は医療報酬支払制度の機能に関する理論モデルを検討し拡張を行い、その理論的帰結の検証が実験経済学的手法を用いた医療経済実験により行われた。 昨年度の予備実験に基く実験が四日市大学経済・環境情報学部の学生を被験者として行われた。この実験は、医療機関が包括支払制度下で自己利潤を最大にする医療サービス水準する時、利潤増加のために最低限度のサービス水準を選択するという理論的推論を検証した。この実験結果は医療機関被験者が自己の利潤が最大となる水準を選択しないというものであった。実験結果と理論的予想の相違は、医療機関被験者による医療サービス水準の選択行動の統計的処理によれば、被験者は水準の選択する際に自己の利潤と患者被験者の満足度をほぼ同程度にあるいは患者満足度を優先的に配慮していることが判明した。 また、患者が医療機関の選択権を持たないかあるいは持っていても限定的であった従来の医療経済モデルを、患者が医療機関の選択権を持つ動学的モデルに拡張し理論分析を行った。その結果は、各医療機関への支払診療報酬額は出来高支払から包括支払への移行直後に大きく低下するが、患者の医療機関選択が進行するに伴い、出来高払制度下の診療報酬額とほぼ同じ水準に収束していく可能性があるというものであった。 この理論結果を検証するため、実験経済学的方法に従って構築されたコンピュータ・ネットワーク実験システムを利用した実験が四日市大と名古屋市大の療経済学部と名城大の都市情報学部で学生を被験者として行われた。この実験により、患者が受診した医療機関の提供医療サービスの質と(地域における)平均的医療サービスの質が既知である場合、両者の乖離に基づく患者の自由な医療機関の選択が、包括支払制度下での医療サービス水準の質の均等化をもたらすという理論的推論は実証された。この研究結果に関する論文は、現在、作成中である。
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