平成10年度においては、高等教育需要の経済学的分析という視点から、「若者が適職につくために〜若者の職業意識の形成に関する調査研究報告書より〜」(大阪府庁での講演)、「大学教育の質と成績の評価をめぐって」(阪南大学『大学教育研究所年報』)、「Kaldor法則と日本経済-近年の経済成長をめぐる予備的考察-』(阪南大学『阪南論集』)、『書評:クラーク・カー著/喜多村和之監訳『アメリカ高等教育試練の時代1990-2010年』」(大阪府『月刊大阪労働』)、Education and Screening Ilypothesis:Evidence from Japan(阪南大学オケイジョナルペーパー)等の研究活動および発表を行った。以上の研究の内容は、大きく次の4点に要約される。 1. 今日の少子・高齢化の状況下で若年労働者が適職につけない原因およびそれへの対策について調査し、若年者の職業意識の形成、転職の機会等について情報提供等の環境整備の必要性を指摘している。 2. 今日の大学の社会的役割について、労働市場への人材供給機関としての大学への質的な要求がまずまず激しくり、財源獲得手段の模索、大学間競争の激化、応用研究の重視などにともなう将来に向けての課題を指摘している。 3. 教育と経済成長の関係を探るための予備的研究として取り上げたKaldor法則の妥当性についての実証分析により、「製造業部門は経済成長の原動力である」という基本的含意を確認している。 4. 教育の経済学の重大なトピックのひとつであるスクリーニング仮説に関して、日本の製造業企業規模別の雇用労働者の賃金データにより実証分析を行い、その含意について欧米で行われた先行研究と概ね一致した分析結果をえた。
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