本研究計画は、日本の研究機関に所蔵されている租桟関係簿冊・魚鱗冊・土地関係契約文書と、実態調査報告書、新聞雑誌、文史資料等の文献資料を比較・対照し、数量的分析を行いに近代江南の小作関係の実態と変化を考察するものである。計画初年度の平成十年度は、当初の研究計画どおりに、台湾を訪問し中央研究院近代史研究所等で研究者から台湾における資料の所蔵状況を聞くとともに、レビューを受けた。二五減租等の土地政策関係の文書はかなり所蔵されているが、江南の租桟、魚鱗冊等は殆どなく、租冊では江北導准委員会関係が存在することが判明した。契約文書等は台湾関係は数多く所蔵され、その出版も進んでおり、今後比較研究が可能と思われる。文献資料では、東京大学、国会図書館、京都大学人文科学研究所、天理大学で調査を行い、新聞資料、文史資料、新編県志等を収集した。また新聞資料では、「時報」及び1940年代初めに蘇州を中心に行われた江兆銘政権の清郷状況を記した「清郷日報」のマイクロフィルムを購入し、主に19世紀後半、20世紀初頭の江南の農村関係記事を収集した。これらの資料を分析する中で地域によって小作関係が大きく異なっていることが改めて明白になった。パーソナルコンピューターへの入力関係は、研究補助員の助力を得て、これまで収集した文書資料のデータを引き続き入力を行うとともに、実態調査報告書についても、数量分析の利用のために表の数値データを入力した。使われている数値資料を異なる角度から再検討したり、他の調査報告書との比較によってことによって新たな知見が生ずると思われる。
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