本研究計画は、日本及びアメリカ・中国の各研究機関に所蔵されている租桟関係簿冊・魚鱗冊・土地関係契約文書と、実態調査報告書、新聞雑誌、文史資料等の文献資料を比較・対照し、数量的分析を行い、近代江南の小作関係の実態と変化を考察するものである。資料文献調査では、日本の京都大学人文科学研究所、九州大学、東京大学、筑波大学等を訪問調査した。特に筑波大学では旧東亜研究所の文書を調査し、その中に浙江省杭州、紹興、嘉興等の契約文書類があることが判明した。海外では、台湾の中央研究院近代史研究所、アメリカのハーバード大学燕京図書館、中国の蘇州市档案館・蘇州市博物館・蘇州大学を訪問調査を行った。このうちハーバード大学燕京図書館収蔵の文書については、研究成果報告書の中で、目録と解題を作成し、併せて簡単な数量的分析も行った。その中で燕京図書館の文書は1960年に日本において購入された可能性が高く、日本の九州大学、一橋大学に収蔵されている同一の租桟の文書があることが分かった。日本でも東洋文庫と九州大学との二つの機関に凋林一桟関係簿冊が所蔵されており、九州大学の嘉慶簿冊と東京大学東洋文化研究所収蔵の無錫金氏文書、一橋大学の沈恒豊桟の契約文書が東北大学に収蔵されている可能性があるなど、各機関に収蔵されている文書がかなり連関をもっている。この点は今後追求すべき課題であろう。これらの文書の調査、分析と文献資料との対照によって得た成果については、これまでの研究を基礎として、新たな知見を加えて平成13年度内に学術図書として刊行予定である。
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