本研究は、金融制度と国際通貨体制を直接の対象としつつ、第一に、現在語られている「グローバル・スタンダード」を歴史的射程のなかで捉え返すことを通じて、その歴史的性格や意義・限界を明らかにすること、第二に、「グローバル・スタンダード」への適合の仕方を比較史的に検討することを通じて、各国の対応の特質を解明することを課題とした。金融システムや金融制度それ自体についての検討は、これまで内外においてかなりの研究の蓄積があるが、「グローバル・スタンダード」そのものの歴史性の解明や、「グローバル・スタンダード」への適合の歴史的意義と限界についての検討は、ほとんど行われてこなかった。 本研究は、これを歴史的局面に即して、実証的に検討したもので、(1)戦後国際通貨体制の「グローバル・スタンダード」となったIMFの成立過程を、挫折したイギリス側のプラン、それもケインズ案そのものではなく、イギリス大蔵省やイングランド銀行の政策から分析する、(2)1970年代初頭のIMF体制の崩壊過程を、新しい「グローバル・スタンダード」の形成を巡る先進国間の対抗と協調のプロセスとして再把握する、(3)1980年代以降の、アメリカ、ヨーロッパ、アジアにおける金融危機の発生過程とその処理過程を分析する、(4)日本における1990年代の金融危機の発生とその後の処理過程において、「グローバル・スタンダード」への適合という政策が、どのような意義と問題点を内包していたのかを分析する、という4つの時期を対象にして、その特徴を明らかにした。
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