研究作業の基礎とも言える資料の収集と分析視角の深化の2点については十分な成果を上げ、また、論文の完成へ向けて大きく進展した。以上の3点について、より具体的な状況は以下の通りである。 (1) 資料収集 東京(国立国会図書館分館東洋文庫、東京大学東洋文化研究所、早稲田大学)や京都(京都大学人文科学研究所)などの国内と中国において資料の収集を行なった。このことが理論形成の基礎としての実証・検証の作業にとって非常に有益であった。 (2) 分析視角 中国の研究機関(東北師範大学、上海社会科学院経済研究所、南京大学)の研究者からレビューを受けたり、また資料の整理・分析を通じて分析視角が一層深化した。 (3) 論文作成 まだ論文としては投稿するまでには至っていないが、複数の論文を同時進行的に作成中である。というのは、各々が相互に密接不可分な関係にあると考えているからである。すなわち、近代中国の在来綿業(土布業)の展開について、当該分野の従来の研究に関する総括と華中各地区(上海地区、江蘇省南部、江蘇省北部、浙江省)の土布業の動向及び特質についての分析は終えており、近代中国における農村副業(土布業以外で土布業に替わって新興した手工業)の経済史的意義についても分析を開始した。 以上のように、今年度は論文を完成することができなかったが、次年度以降は研究成果として一挙に論文を掲載することができそうである。
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