研究概要 |
今年度も、昨年度までに引き続き、東京(国立国会図書館分館東洋文庫、東京大学東洋文化研究所、一橋大学経済研究所図書室)や京都(京都大学人文科学研究所、京都大学経済学部図書室)において資料収集を行なった。ただ、昨年まで閲覧を続けていた中国の貿易統計(China,the Maritime Customs : Trade of China)については、各大学・研究機関に分散的に所蔵され、しかも欠落部分も多かったが、台湾の国士舘が『中華民国海関華洋貿易総冊』として復刻版を刊行したため、1902年以降の中外貿易・中国国内交易の動向について全体をほぼ網羅的に閲覧することが可能となり、再度の閲覧の作業に取りかかった。 また、2000年12月には、南京大学歴史系(学部)の研究者(教授)との学術的な交流(レヴューを含む)を実現することができ、近代中国を歴史学的に捉えることの需要性や華中が中国全体の中でいかなる位置を占めるのかを再確認した。 このようにして、今年度は、昨年度までの作業と合わせて、「近代華中における土布業の変容と農村経済構造の差異」として総括できるところにまで近づきつつあり、その文章化はほぼ完成している。その具体的な構成は、第1章.上海における土布業の「近代化」再考、第2章.蘇南における土布業の二極化、第3章.蘇北における土布業の二重性、第4章.浙江省における土布業の展開、補論1.中国沿海部農村における手工業の新興、補論2.米生産をめぐる蘇北と蘇南の関係(とりわけ蘇北の近代南通土布業の持続的発展を支えた米生産をめぐる事情)となっている。 ただし、これらを公表せずにいるのは、既に発表した拙稿との整合性を考慮し、かつ、それらを「華中農村経済の構造的特質と近代化」という、より大きな枠組みの中にいかに位置付けるかを調整中だからである。
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