本年度は、「20世紀における中国の農業の近代化と農業生産構造の特質」を研究課題とした当該プロジェクトの最後の年度だったので、これまでの研究の総括を行なった。すなわち、既発表論文と昨年度までにすでにこ書き上げていた論文(未発表)数篇に対して推敲を重ねるとともに提起すべき全体の枠組みの中に位置付ける作業を行なった。 このため、まず、東京(国立国会図書館分館東洋文庫閲覧室、東京大学東洋文化研究所図書室、一橋大学経済研究所図書館、早稲田大学図書館)及び京都(京都大学人文科学研究所閲覧室、京都大学図書館、京都大学経済学部図書室)において資料の再確認と遺漏資料の収集を行なった。 また、前年度に引き続き、2002年1月には、中国の南京大学を訪問し、研究者(歴史系教授・中華民国研究センター主任)と上記研究課題に関する意見を交換したり、レビューを受けるなどして学術研究交流を行ない、歴史学的な分析視点をめぐって貴重なアドバイスを受けることができた。 こうして、合計で9つの章と3つの補論からなる研究論文としてまとめることができ、すでに発表を待つばかりとなった。その概要は、様々な品種改良事業を分析することによって、中国農村経済にとっての近代化の意味を考察したと同時に、また、主に華中の東部における土布業(在来綿業)を事例として取り上げて、経済史における基本的なモデルとなっている従来の生産・経営形態の理解に対する再検討を試み、総じて、中国の農村経済構造の特質に迫った。
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