平成10年度〜平成12年度の3年間の本研究でもっとも力を入れたのは、エウレギオの実態調査である。1999年末に56を数える「ヨーロッパ国境地域連盟(AGEG)」加盟団体のうちで、もっとも古くに成立したドイツ・ベネルクス国境沿いの6エウレギオを計画通りにすべて歴訪し、それぞれ事務局長に聞き取り調査を行い、貴重な資料と情報を得ることが出来た。またこの間にEU地域政策関係の資料も相当量収集できた。この間、長年の共同研究者であるGerhard-Mercator-Universitat Duisburg Gunter Heiduk教授とは毎年のように会い、とくに最終年度には1ヶ月間同教授を京都大学に迎え、集中的に意見・情報交換を行うことができた。EUの地域政策に詳しい同教授は会うたびに最新の情報をもたらし、これは本研究の進展に大きな意義をもった。 本研究によって明らかになったことは、第一に、EUの地域政策の重点が1990年代以降国境地域に照準を合わせるようになったことである。第二に、これに照応する国境地域間協力団体としてのエウレギオがそれぞれ固有な利害状況に置かれ、したがってエウレギオ間に対立や競争関係が発生していることである。このことは本研究代表者の理論的準拠枠である原経済圏概念によって、かなり説明がつくこととの見通しが一層強まった。第三に、6エウレギオのうちでもEuRegio SaarLorLuxRheinは他と異質な存在であり、この異質性がここに伏在する原経済圏の検証の鍵であることである。
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