本年度は、農村と都市の両地域における史料の調査・収集を旺盛に進め、研究の基礎を築いた.農村については山梨県南都留郡西桂村について兵事関係史料を、また岐阜県長良郡長良村については『学籍簿』『卒業生台帳』などの小学校史料を調査・収集した.また都市部については、神奈川県川崎市で小学校関係史料や労働関係史料を調査・収集した.とくに、川崎市労働資料室の資料は戦時から戦後にかけての川崎市の変化を知る上で良好なものが多い。また今年度は、戦後1950年代に東京大学社会科学研究所を中心に行われた京浜工業地帯調査を検討し、その過程で、当時の調査資料が東京大学社会科学研究所に残存していることを確認した。その中でも、川崎市を調査対象に含む労働力調査は、現在では貴重な歴史資料であり、この東大社会科学研究所資料に川崎市労働資料室資料を加えると、当該時期の川崎市の変化がよくわかるように思われる。以上の諸資料については、撮影および複写によって収集を進めている。今のところ、戦時から戦後にかけての地域社会の変化は巨人なものがあったが、それは戦時動員と戦後改革の二重の衝撃によってあらわれたものであり、どちらかのみに重点をおくことはできないこと、二重の衝撃の歴史的意味については過不足なく評価することが肝要であり、今年度収集した資料を通じてその分析を進めているところである.
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